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「かならず、還る」⑯ [ヤマト2199外伝]

  

 

 

     Epilogue

 

 

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 砂時計のような5分が経過した。

モニター画面が消えても、しばらく彼は動けなかった。

こんな情けない面を、通信室の外で

家族との交信を楽しみに待っている連中に見せるわけにはいかない。

彼はもう一度モニター画面に向かって

無理やり笑ってみた。

目の前の暗い画面には、ぎこちない笑顔が映っていた。

よし、なんとかなりそうだ。みんなには

「二人で子供の名前を考えるだけで持ち時間を使っちまったよ。」とでも

明るく言ってやることにしよう。

そして彼は力強く、静かに、席を立った。


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「かならず、還る」⑮ [ヤマト2199外伝]

 episode: 0

 

   52番目の男

 

 

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 妻は娘にどんな名前をつけたのだろうか。

はやる気持ちを抑えきれずに、薄暗い通信室で彼はモニター画面を見つめていた。

抜錨当日の朝に娘が生まれた。

二人であれこれ考えた命名は妻に委ねて、

彼はヤマトに乗艦した。

娘を抱いてリビングのソファに座っている妻の姿が映し出された。

まだ、こちらには気づいてないようだ。

小さな声で彼は妻の名前を呼んだ。

「あなた・・? あなたなのね?!」

弾かれたように顔を上げた妻が、娘を抱いたままモニターに駆け寄ってきた。

「よかった・・・無事なのね。元気なのね。ほんとうに・・・」

一気に溢れ出た涙で彼女の言葉の語尾は消え入るように掠れてしまった。

「当たり前じゃないか。それに家族と5分の交信が許可されたことは

ヤマト計画本部から連絡が入っていただろう?」

あまりの妻の取り乱し方に彼が少し戸惑っていると、

彼女は意外な言葉を口にした。

「本部からの連絡なんて・・、怖くて見られなかった・・・」

その言葉は嗚咽から絞り出されるようにこぼれ落ちた。

そして少しずつ、途切れ途切れに妻が話し始めた。

 

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先の「メ弐号作戦」で5人が戦死した。

その悲報はヤマト計画本部を通じてそれぞれの家族へと伝えられた。

それ以来、地球に残された乗組員の家族たちすべてが、

ヤマト計画本部からの連絡に怯えている。

もしかしたら、次は自分の元へ戦死報告が届くのではないか。

かけがえのない息子が、娘が、彼が、彼女が死んでしまったのではないか。

還りを待つ誰もが日々そんな不安に心を擦り減らしていた。

メールの差出人に

「ヤマト計画本部」の文字を見つけた瞬間、胸がこくんと鳴った。

そんなはずはない。そんなことは絶対ない。

何度も、何度も彼女は自身に言い聞かせた。

それでも指が、手が、体が動かない。

彼女はさんざん逡巡した末に、

そのメールを開けることはとうとう出来なかった。

それを聞いて彼は胸がつまった。

戦っているのは自分たちだけではないのだ。

妻が娘の姿をモニター画面いっぱいに映してくれた。

その寝顔を見つめながら、彼はゆっくり、静かに妻に話しかけた。

 

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「君が娘につけてくれた名前を、俺のお守りにさせてくれないか。」

夫の真意を測りかねている妻に、彼は肩を抱くようにやさしく言葉をつづけた。

「俺はかならず還ってくる。もう一度かならずこの手で娘を抱くんだ。

そしてその時にはじめて、君から娘の名前を俺に告げてほしい。

その日を信じることで、これから先にどんなことがあっても俺は頑張れる。

そんな俺が死ぬわけないだろ?

だからその日を、きっと、君と、娘の笑顔でこの俺を・・・。

約束だ。かならず・・・」

もうそれから先は言葉にならなかった。

その時、彼女の腕の中で娘が小さくむずがった。

彼はそっと娘の頬をモニター越しに撫でてみた。

娘は眠ったまま、くすぐったそうに少し笑ったように彼には見えた。

 

 

 

 

【妄想コメント】

実はこの話がいちばん書きたかったエピソードです。74年版でも徳川さんの前の若者が泣きながら通信室を出てくるシーンがあります。2199版では笑顔で希望を語る若者に変更されているのですが、よく見ると通信室から出てきた時の表情はどこか憂いがあります。そのあとの台詞と笑顔もなんだかぎこちないです。本編を観てそれがずっと気になってました。そこで2199版の若者も本当は74年版同様に切ない気持ちを取り繕っているんじゃないかと妄想しました。このエピソードの中で、島の母親がなぜ叔母の見舞いに出かけてしまっていたのかもさりげなく理由づけしたつもりです。


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「かならず、還る」⑭ [ヤマト2199外伝]

 episode: 13

 

 

  情報長

   新見 薫  一尉

 

 

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 芹沢軍務局長との交信を終え、

新見は暗いモニター画面に映りこむ自分の姿をしばし見つめていた。

一人に割り当てられた5分の通信時間があと30秒ほど残っている。

キーボードの上に置いた右手の指が

勝手に慣れ親しんだID番号を滑るように叩く。

「私は何をしているのだろう・・」

新見は自分に呆れながらエンターキーを押してみた。

目の前の通信端末がククッと乾いた音をこぼして

入力先へのアクセスを試みる。

「私が選んだ道は間違ってはいないよね・・・守・・」

目の前の真っ暗な画面がしばらくして反応する。

静かに蒼く点滅する「NOT FOUND」の文字。

新見はタイムアウトになるまで、ただその画面を見つめていた。

 

 

 

【妄想コメント】 

常に理知的で聡明な新見。そんな彼女の内に秘められた心の揺れを、古代守への思い、確信しているはずのイズモ計画への迷いなどを通じて描きました。

 


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「かならず、還る」⑬ [ヤマト2199外伝]

 episode: 12

 

  船務長

  森 雪 一尉

 

 

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 森雪は5分の交信で土方司令官に伝えるべき項目をもう一度頭の中で整理してみた。

皆が赤道祭を思い思いに楽しんでいる。

しかし雪はその場に身を置きながら気持ちは晴れないでいた。

抜錨以来、雪の心にある澱のような疎外感。

「地球を救う。」

その思いはヤマトに乗り込んだ者たちとなんら変わらないはずだった。

しかし気づいてしまった。

乗組員それぞの傍らには、かけがえのない守るべき人がいる。

わずか5分の会話で皆が今繋ぎ止めようとしているもの。

それはそれぞれの希望だ。

なのに雪にはそれが無い。

あるのは心に何の拠り所も持たない任務という渇いた使命感だけだ。

赤道祭での皆の熱の中で、

今日はいっそうその孤独が胸を突く。

雪は居たたまれずに窓の外を見た。

そして所在無げに、船外作業中の彼の姿を目で追った。

 

 

 

 

【妄想コメント】 

山本との仲睦まじい姿が気になって補修作業中の古代を見つめる雪。憂いのある表情のワケはそれだけではないと妄想しました。それにしても2199版の雪は謎がいっぱいのままですね。2014年の映画でそのあたりが解明されるか楽しみです。


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「かならず、還る」⑫ [ヤマト2199外伝]

episode: 11

 

  航空隊長

  加藤 三郎 二尉

 

 

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 アクセスした画面にいきなり親父の姿が映し出され少し困惑した。

俺がきっと交信してくると親父は確信していたのだろうか。

「ご無沙汰しております。」

そう言う俺に親父は目を閉じ何も話し出そうとはしなかった。

しばらくして、親父は静かにゆっくりと読経を始めた。

反射的に思わず俺は姿勢を正した。

 

杉山が冥王星で戦死した。

俺のすぐ側で杉山の機体は一瞬で撃墜された。

あの時、俺がもう少し早く敵影に気づいていれば・・・。

あの時、俺がもう少し先行していたら・・・。

明夫の時もそうだった。

空で仲間を失うたびに、そんな思いだけがかさぶたのように残っていく。

逝ってしまった者と生きながらえた俺との境界線は、

瞬きする間ほどの違いでしかない。

 

「信じられるのは己の意と力。」

そんな思い上った気持ちで俺は航空隊を志願した。

けれど俺の命はいつも多くの仲間たちに守られていることを空で知った。

そしてまたその同じ空で、

数えたくない多くの命が散っていった。

今の俺は空に上がるたびに、

残酷なまでの生死の間でいつも押しつぶされそうになる。

 

「それでもなぜ、空に上がるのか?」

必死に手繰り寄せようとしたその答えは未だ見つからない。

だからこそ、見つかりそうにないその答えを探して俺は空に上がる。

多くの仲間の命を感じながら、

その答えにたどり着くまで、俺は死ぬわけにはいかない。

 

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親父の読経が止んだ。

俺は静かに親父の言葉を待った。

カウンターの残り時間はあとわずかになっている。

「生きて還ってこい。」

タイムアウト寸前の親父の一言が、

強張っていた俺の心へ一気に流れ込んできた。

「ありがとうございました・・・」

親父の姿が消えてしまったモニターに向かって、

俺は小さく頭を下げていた。

 

 

 

 

【妄想コメント】 

本編での加藤と親父さんの交信シーンはかっちょよかったですね。でも意味深過ぎて多くが語られてませんでした。そこで加藤の交信を勝手に妄想しました。山本が語った「ああ見えて人の生死に人一倍敏感な人ですから」という加藤の人柄を意識してストーリーを構成しました。

 

 


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「かならず、還る」⑪ [ヤマト2199外伝]

episode: 10

 

  気象長

  太田 健二郎 三尉

 

 

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 トイレの鏡の前で、太田は入念に自分の顔を眺めていた。

「どんなに辛いことや悲しいことがあっても、必ずご飯だけはお腹いっぱい食べなさい。

そうすればきっと笑顔になれるから。」

それは太田が小さい頃からの母の口癖だった。

そんな母は俺を見るなり

「少し痩せたんじゃないかい?しっかり食べてるかい?」と

きっと聞いてくるだろう。

ふっくらとした変わらぬ頬を両手で撫でながら、

鏡の中の自分をもう一度だけ確認して

太田は通信室へと向かった。

 

 

 

 

【妄想コメント】 

第一艦橋メンバーであるにもかかわらず、太田のエピソードはほとんどありませんね(笑)。本編では大食いであることが唯一の彼の見せ場だったかもしれません。そこを膨らませて、大食いの理由をちょこっとしたエピソードに仕立てました。

 

 


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「かならず、還る」⑩ [ヤマト2199外伝]

 episode: 9

 

  衛生士

  原田 真琴

 

 

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  繋がったモニター画面には、弟の真一が父と母に挟まれて静かに座っていた。

抜錨前に近々退院できると聞いていたのは本当だったのだ。

それがこれ以上入院していても

回復の兆しがないゆえの退院であったとしても、

やはり真琴は嬉しかった。

一年前、テロとも噂された官邸近郊での大事故。

多くの政府高官が巻き込まれ、

救急隊員の一人として現場に赴いた真琴は、

初めて見るその悲惨な状況に絶句した。

そして咄嗟に近くでうずくまり震えている母娘に駆け寄った。

どこを負傷しているかもわからないほど

衣服は出血で真っ赤になっている。

怯む真琴はその時後ろからドクターに首根っこをつかまれた。

「何をしている!一般市民より、政府関係者が最優先だ!」

「でも・・」

そう言いかけた時にはすでにドクターは官邸へと走り出していた。

仕方なく真琴も母娘をそのままにして後を追った。

 

 

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その大事故に幼い弟の真一も巻き込まれていたと知ったのは、

真琴の勤務する病院のベットで

魂が抜け落ちたように天井を見つめる真一を見つけた時だった。

幸い怪我は軽傷だった。

しかし、その事故以来、真一は感情と言葉を失ってしまった。

真琴は勤務の合間を見つけては

真一の病室を何度も訪れたが、

症状は一向に回復しなかった。

崩れた瓦礫の下から真一が救出された時には、

事故発生からかなり時間が経っていたと後で聞いた。

真一が必死で助けをもとめていた時、

自分はそんな人たちを置き去りにしてしまった。

あの事故以来、真琴はその罰を受けているのだと

自身を責め続けていた。

 

モニターの向こうで

無表情のままこちらを見つめるだけの真一。

その時、小さな奇跡が起きた。

「真琴、その服かわいいね・・・」

消え入るような細い声だったが、

真一は確かにそう言ったのだ。

両脇の両親も驚いていた。

思えば真琴が真一の病室を訪ねる時は、

いつも勤務中の看護服だった。

真琴は仮装したメイド服のカフスボタンを指でつまんでみた。

そしてさっきまであれほど腹を立てていた

太田のいたずらに感謝した。

 

 

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真一はそれきりまたいつもの抜け殻に戻ってしまったけれど、

真琴や両親にはやっと見つけた小さな希望だった。

「今日は久しぶりに大好きなお酒をいっぱい飲んでしまおう。」

真琴は幾度目を瞬いても

ぼやけてしまうモニター画面の真一をみつめながら、

ふとそんなことを思っていた。

 

 

 

 

【妄想コメント】

エンケラドゥスで敵兵のガミロイドを治療しようとした原田の行動には何かそれにつながる過去があったのかなと妄想して、それをシリアスなエピソードにしたいなと思いました。そこに本編でのコミカルなメイド服のコスプレも絡めてラストでハンガーにメイド服を掛けてはしゃぐ原田の理由につなげました。

 


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「かならず、還る」⑨ [ヤマト2199外伝]

 episode: 8

 

  衛生長

  佐渡 酒造 艦医

 

 

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 コスプレ姿ではしゃぐ女性乗組員や

酔いに任せて気炎を上げる輩などとすれ違いながら、

佐渡は通信室へと向かっていた。

皆がそれぞれに赤道祭を楽しんでいた。

そんな彼らに「緊張感がない」などと

年寄りの説教を垂れるつもりはない。

皆、このあまりに困難で過酷な航海の中で、

絶望に揺らぐ心の針を

日々懸命に希望へ押し戻そうとしているのだ。

今日くらいはその重荷を忘れるのもいい。

 

「緊急の通信要請だそうです。もちろん極秘ですよ~」

あからさまにいたずら顔をした原田から受け取ったメモには、

見覚えのないID番号が記されていた。

これも赤道祭での余興のひとつだとわかっていたから、

それに乗せられるのも悪くないと通信室までやってきた。

佐渡に最後の交信を交わすような身寄りがないことは

原田もよく知っている。

結局、佐渡はメモの通信先に何も思い当たらないまま席に着き、

そのIDを打ち込んでみた。

 

思わず身を乗り出していた。

モニターには佐渡の愛猫であるミー君が映っていた。

そこはミー君を預けた佐渡の住むアパート管理人の部屋だった。

佐渡はポケットから小さな猫じゃらしを取り出した。

それは抜錨以来いつもミー君を思い、お守りのように忍ばせていたものだ。

 

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「ミー君・・・」

猫じゃらしをモニターに近づけてそっと呼んでみる。

懐かしい声を探してミー君が首をせわしなく動かした。

どうやらこちらの音声や映像も向こうに流れているようだ。

やっとミー君もモニターの佐渡に気付いたらしい。

画面いっぱいにミー君の顔が近づき、

佐渡の振る猫じゃらしに夢中になった。

佐渡は思わずモニターのミー君に頬擦りをする。

ミー君も画面越しに佐渡の顔を舐める。

頬に伝わるモニターの熱が、

佐渡にはまるで

懐かしいミー君の体温のように感じられた。

 

 

 

 

【妄想コメント】

74年版ではコミカルだった佐渡先生とミーくんの交信シーンをシリアスにアレンジしたいなと思いました。ミーくんとの頬ずりは74年版徳川さんと愛子のシーンへのオマージュです。

 

 


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「かならず、還る」⑧ [ヤマト2199外伝]

episode: 7

 甲板部員
 宮澤 ちづる

 

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 こうして一人で部屋に居ると、気分がすっと冷めていくのがわかる。

同僚たちとコスプレなどしてはしゃいでみたけれど、

そんなことで気持ちを紛らわすことなど出来ないと最初からわかっていた。

 

「メ弐号作戦」から杉山さんが還ってこなかった。

戦死したんだと頭では理解していても、

それを実感することが出来ない。

今でも航空隊の控室を覗けば

「ちづる、俺の機体はちゃんと整備してくれたか?」

といつもの笑顔がそこにあるような気がしてならない。

こんなものなのか。

自分の感情と現実に

どう折り合いをつければいいのかがわからなかった。

 

宮澤はさっきパーティ会場で撮った写真を取り出してみた。

「“今日を精いっぱい楽しむ。”それが俺たちのお守りなんだ。

もし神様がどこかで 俺たちを見ていてくれたら、

こんなに楽しそうに生きている連中を

死なせてしまうのは惜しいと思ってくれるかもしれないだろ。

航空隊のみんなは、

本気でそう信じていつも空に上がるんだ。」

そんな話をしてくれた大工原さんが写真の中で笑っていた。

 

「私も今日を精いっぱい生きよう。」

それしか出来ることはないのだから。

宮澤は立ち上がり

鏡の前で着ぐるみの耳を少し整えて薄暗い部屋から出た。

赤道祭の熱気はまだまだ続いていた。

その喧騒とまぶしい通路の照明に軽い眩暈を覚えながら、

宮澤は再びパーティー会場へと足を向けた。

 

 

 

 

【妄想コメント】

なんでコスプレ?、ちゃらい。。。悲壮感が無い。。。と本編を観て思いましたが、 この女性たちにも実はシリアスな物語があるんだと考えました。なんとなく猫耳の女性の話にしようと思っていたら、七色星団の戦い「大工原の旦那」の撃墜シーンで猫耳女子(宮澤)との写真がちらっと出てきたのでこれだ!と思って書きました。


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「かならず、還る」⑦ [ヤマト2199外伝]

  episode: 6

 

  機関士

  藪 助治 一曹

 

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 「何が楽しんだか・・」

コスプレ姿で嬉々と廊下を走る女性乗務員たちに呆れていると、

いきなり艦長がやってきたので藪は慌てて敬礼をした。

艦長は直立不動の彼を一瞥しただけでその横を通り過ぎていった。

艦長と一塊の機関士の関係なのだ。

当たり前だとわかっていても、

こういう時に藪はつくつぐ自分の存在について考えてしまう。

 

「所詮、俺なんて・・」

いつの頃からか気がつけばいつもそう思って生きていた。

遊星爆弾で両親を亡くし、もう守るべき家族も誰もいない。

だからといって

「地球を救うために」などと大仰な大義も無い。

それどころかイスカンダルへの航海が成功する可能性など

限りなく少ないとすら思っている。

それなのに、なぜ皆はてらいもなく希望を口にできるのだろう。

藪にはそれが不思議で仕方なかった。 

そんな彼らの熱に包まれた赤道祭に、

藪が身を置く場所などどこにも無かった。

 

藪は何も望んではいなかった。

自分自身が生きながらえる意味も

理由さえも思い当たらなかった。

窓の外には補修作業中の甲板員たちの姿が見える。

「俺もちっぽけな交換部品のひとつだ。」

 

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そんな藪でも、

此処に在る意味を感じられる時がある。

それは徳川の傍で

ヤマトのエンジン音を耳にしている時だ。

そして何故かその時、

このエンジン音は絶やしてはいけないと思うことができる。

ほかには一切何もない。

ただそれだけの理由で藪は此処に在る。

 

 

 

 

【妄想コメント】 

2199版では藪がかなりフィーチャーされてました。でも悲観主義の彼が「俺たちが地球を救う。」と純粋な気持ちでヤマトに乗艦したとは思い難い。そこで彼は何故ヤマトに乗ったのかを妄想しました。その勝手な妄想が、後の本編での彼の選択と行動ともなんとなくつながったように思います。


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「かならず、還る」⑥ [ヤマト2199外伝]

episode: 5

 

 通信長

 相原義一 三尉

 

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 「地球との安定的な通信環境はいつまで確保できるか?」

冥王星での「メ弐号作戦」に勝利した直後、

相原は艦長室に呼び出され、艦長の沖田からそう訊かれた。

「ヘリオポーズを通過すると、おそらく地球との通信は不可能です。

それまでなら何 とか・・」

相原はこれまで幾度となく軍規に反して家族との密かな交信を繰り返していた。

太陽圏外縁部に到達した今、

確かにその通信状態はかなり不安定になっていた。

 

「相原通信長、君の意見を訊かせてくれ。

乗組員は皆、地球に大切な家族を残してこの過酷な航海に挑んでいる。

それゆえ地球の様子が皆、気になっているだろう。

しかし今の地球は・・・。

冥王星基地を殲滅したとはいえ、ヤマトが地球から遠のくにつれ、

人々の不安はかえって増すばかりだ。

皆ヤマトの帰還の可能性だけを話し合い、

そしてそのあまりに困難な旅に人々は絶望しつつある。

さらに暴動やテロが頻発し、日増しに疲弊していく今の地球。

そんな地球の様子を乗組員たちは知るべきなのかどうか。

君はどう思うかね?」

 

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相原は胸の鼓動が激しくなるのを感じていた。

地球に残してきた年老いた両親のことが気になるあまり、

つい無断で何度も家族と連絡を取ってしまった。

そして母のために

少しでも食料を手に入れようと

暴動に参加した父親が重傷を負ったことを知った。

出来る事なら今すぐにでも両親のもとへ帰ってやりたい。

しかしどうすることも出来ない苛立ちから、

相原はここ数日眠れない日が続いていた。

「私には、わかりません・・・」

相原は軍規違反の交信を悟られぬよう、

つとめて感情を殺して答えた。

 

「ふむ・・」

しばしの沈黙の後、

沖田は窓の外に目を移して

静かに独り言のように語り始めた。

「人は悲しいくらいに弱くて脆い。

そして時に人は、己のその無力さに絶望する。

しかし、私はその者こそがまた強いのだと信じる。

無力な己を甘んじて受け入れ、

己が出来うる事のみに向き合う。

それこそがまた、人の強さであると私は信じたい。」

 「この人はすべてを知っている。」

沖田の横顔を見つめながら、相原は思った。

 

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 「希望者には地球との5分の交信を許可する。」

今、第一艦橋でそう告げる艦長の姿を見つめながら、

相原はあの時の沖田の言葉を思い出していた。

あれ以来、相原は家族との無断通信をやめていた。

「俺はかならず、父さん母さんの元に還ってくる。」

今日のこの最後の交信で、

両親にそれを笑顔で伝えよう。相原は強くそう思った

 

 

 

 

 【妄想コメント】

ナイーブないいキャラなのに2199版では相原の見せ場が少ないんですね。そこで削られてしまった74年版の家族との無断交信のエピソードをアレンジしてみました。自分の妄想が本編の最終話でちょこっと出てきた相原の話ともうまくつながってちょっとうれしかったです。また74年版で毛利長官が伝えた地球の惨状を、沖田の台詞に少し盛り込んでみました。

 

 


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「かならず、還る」⑤ [ヤマト2199外伝]

 episode: 4

 

 砲雷長

 南部 康雄 二尉

 

 

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 「状況がわかっていないのはお前のほうだ!

思わずそう怒鳴ってしまった。

 

お前は事あるごとにいつも私の考えに抗ってきた。

今回もそうだ。

お前は反対する私や母さんを振り切ってまでヤマトに乗艦した。

政府高官を通じてお前の乗艦を取り消すことなど

私にはいつでも出来た。

それなのに何故お前を行かせたのか、

この父の本当の思いがお前にわかるか?

 

私は今まで、この父を否定することでしか

自分の居場所を見つける事ができないでいるお前に

いつも物足りなさと歯がゆさを感じてきた。

だからこそ、私はお前を往かせたのだ。

 

これからお前は、遠くこの父から、家族から離れ、

果てのない宇宙の海で今まで目を背けてきた己と

嫌というほど向き合うことになるだろう。

そして幾度となく自分の無力さに打ちのめされることだろう。

私はそれを望んだのだ。

 

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康雄よ、その絶望を己の力で希望に変えてみせろ。

ヤマトが地球に残された明日への希望であるように、

お前がいっさいに囚われず

真っ向の自分を見つけて還ってくること。

それこそが私にとって、明日につなぐ希望なのだ。

お前が今回の航海を全うし、この地球に還り着いた時、

そこには今のお前では決して見えなかった景色が広がっているはずだ。

 

父はなによりもそれだけを切に願う。

この絶望の地球で、父はその日をただひたすら待ち続ける。

 

 

 

 

【妄想コメント】

南部の父親は典型的な頑固でワンマンな人として描かれてましたが、実は息子のことを誰よりも考えているとしたら・・。そんな思いつきで父親の思いを通じて南部を描きました。「僕には心に決めた人がいる」とつぶやきコミカル調に終わる南部の交信シーンをシリアスにアレンジしました。

 


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「かならず、還る」④ [ヤマト2199外伝]

episode: 3

 

  副長 兼 技術長

    真田 志郎 三佐

 

 

 

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 エンケラドゥスで捕獲したガミロイドの分析の手を休め、

真田はVLBI望遠鏡による8年前の青い地球をモニター画面に映し出した。

「汚れちまった悲しみに、今日も小雪の降りかかる・・・」

真田は薄暗い分析室で一人小さくそうつぶやいてみた。

意味も分からないまま、

幾度となく読みかえすうちに憶えてしまった詩の一節。

最近はそれが身に染みて痛い。

木星でのあの閃光が頭を離れない。

波動砲の性能は入念なシミュレーションによって十分把握しているつもりでいた。

しかし、実際のそれは数値やデータなどでは

計り知ることが出来ない脅威だった。

そして己の成してしまった事の重大さに戦慄した。

 

 一年前、秘密裏に立ち上げられた「ヤマト計画」。

その実行メンバーに選ばれたとき、俺はやっと自分の居場所を見つけた気がした。

これまでの研究や自身の考えが

地球を救うことにつながると想像しただけで興奮した。

その先にこそ人類の希望があると信じて

俺は俺のすべてを今まで注ぎ込んできた。

だがその結果、守るべき人類をも滅ぼしかねない禍を

この手で創ってしまった。

諸刃の剣となった波動砲の脅威を目の当たりにして、

俺はとうとうわからなくなってしまった。

波動エネルギーの兵器転用、自動航法システム、

そして陽動のための「メ号作戦」。

これらすべては青い地球を取り戻すための清廉な大義であるはずだった。

 

しかし本当にそれらは正しい選択だったのか?

いや、本当はずっと前から気づいていたのかもしれない。

ただひたすらに俺は自分を誤魔化し、考えないようにしてきただけなのだ。

だからこそ俺は、いつしか中央司令部の命令であるというだけで

かけがえのない親友に平気で嘘がつけるような男になってしまった。

 

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お前が散った冥王星で、南部が意見具申した時、

「波動砲は使わない」とあいつは即座に断言した。

俺には一瞬、あいつの顔がお前に見えた。

いや、間違いなくあの時のあいつは、

どんな時でも自分に正直なお前そのものだった。

俺ならもし、それが中央司令部の決定ならどうしていただろうかと考えるだけで

今でもたまらなく不安になる。

あの時、「自分に正直になれ。」と

お前が俺に突きつけてきたような気がしてならない。

 

それから俺は、弟のあいつが時折見せる表情や物言いに

幾度となく兄であるお前の気配を感じるようになった。

俺はいつしかあいつの中にお前を探していた。

今の俺にとって、古代進は古代守そのものなのかもしれない。

だからこそ俺はあの「メ号作戦」が陽動だったことを、

お前に伝えられなかったその事実を、

いつかあいつに話そうと決めた。

 

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臆病な今の俺には、それがいつのことになるかさえわからない。

しかしそれでも、合理に縛られた科学者である前に、

命令にのみ忠実な士官である前に、

その思いを持ち続けることで

かろうじてまだこの俺は一人の生身の人間として踏み止まっていられる。

そんな気がしてならない。

 

 

 

 

【妄想コメント】 

一見クールで合理主義者のような真田の人間的な部分を描きたいと思いました。真田が一人吐露する迷いや弱さを、本編の古代守や進とのエピソードとつながるように構成しました。

 


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「かならず、還る」③ [ヤマト2199外伝]

episode: 2

 

  航海長

  島 大介 一尉

 

 

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 残り時間が30秒を切った。

思いはすべて幼い弟の次郎に託すことが出来た。

ただ母ともう一度話せなかったことだけが少し心残りだ。

各乗組員に家族との5分間の交信が許されたことは、

国連宇宙軍ヤマト計画本部から

それぞれの家族へ既に連絡が入っているはずだった。

それなのに入院中の叔母の見舞いに出掛けてしまった母は、

やはりまだあのことを気にしているからだろうか。

 

 抜錨前夜に母と少し揉めた。

7年前のガミラスとの開戦で、

巡洋艦「むらさめ」の艦長だった父が戦死している。

その父を追うようにして軍人になった俺のことを、

母は今でも快くは思っていないだろう。

そして抜錨直前に決まった俺の航海長への就任。

それは父の階級がひとつ上がるたびに

不安を積もらせて生きてきた母の苦い記憶を揺さぶった。

「父さんのような思いはもうたくさん。死んでしまったら何も残らない。

大介は何が あっても必ず還ってきて・・」

 

抑え込んでいた気持ちが溢れてしまった母に対して、

俺は気遣うどころか、軍人としての父の尊厳を汚されたような気がして

思わず辛く当たってしまった。

そして抜錨の日、母へまともな挨拶も出来ずに家を出た。

ヤマトに向かう専用シャトルを待っていると

次郎が母から預かったお守りを渡しに来てくれた。

「父さんの時に渡せなかったから、それで・・」

母からの言付けを聞きながらそのお守りを手にした時

俺は初めて彼女のすべてを理解した。

 

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次郎から受け取ったそのお守りは

頼りないほどに柔らかく、そしてすっかり萎れていた。

祈るしか術のなかった母は、

父が空に上がるたびにこのお守りに願いを託し続けてきた。

幾度となく祈る彼女の手の中で

このお守りはこんなにも萎れてしまったのだ。

そしてたった一度、

このお守りを父に渡せなかったあの日のことを

母は今も悔やみ続けている。

その母が今度は息子のために祈り

そして俺に渡されたこのお守り。

その願いを思うと胸がつまった。

だからこそ、母にあらためて

「かならず還ってくる。」ときちんと伝えたかった。

 

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とうとう交信時間が残り10秒を切った。

その時モニターの遠く奥から「ただいま」という母の声が聞こえた。

母さん、早く、モニターの前に・・・・。

「待ってくれ!もう少し時間を、母さん!・・・」

思わずモニター画面に向かって、俺は叫んでいた。

 

 

 

 

 

【妄想コメント】 

74年版の徳川さんが「まだ話したいことがある!」とタイムアウト寸前の画面にすがるシーンは、2199版では島の演出に使われたのですが、どうも淡泊です。島がどうしても母に伝えたいことがあったとしたらそれは?そこに彼が時折取り出して思いにふけるお守りも絡めて「もう少し時間を!」と叫ぶ島に意味を持たせたいと思いました。


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「かならず、還る」② [ヤマト2199外伝]

episode:1

 

  機関長

   徳川 彦左衛門 三佐

 

 

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 闇物資に手を出した長男夫婦を責めることは出来ない。

それも家族を守り、生き抜く覚悟からの選択なのだ。

しかし足元の暗さばかりに怯えていても

地球に残された時計の針は止められない。

顔を上げ、明日の光を探し、次の世代に指し示すこと。

それがわれわれに課された使命と信じればこそ、

徳川はなんとしてもそれを地球で待つ家族たちに伝えたかった。

 

 気が付けば、堰を切ったように話し始めていた。

「太助、望みを捨てるな。

たとえ駄目かと思っても、明日への希望を捨てると生きていくのも辛かろう。

明日を見据えろ。

そして僅かな光であってもそれを手繰り寄せ、

愛子にその希望を託せ。

いいか太助、必ず彦七たちにも伝えてくれ。

愛子を育てろ。愛子、大きくなれ。」

 

 徳川は一気に捲し立てた。

まだまだ伝えたいこと、話したいことが次々と口を衝いた。

今にも溢れ出しそうな気持ちを、話し続けることで必死に堰き止めた。

モニターに映る愛子の顔がどんどん霞んでいく。

もっともっとこの目にその愛しい姿を焼き付けておきたいはずなのに、

堪えた涙がそれを遮る。

それでも徳川は瞬きもせず、ひたすら話し続けていた。

 

 

 

 

 

【妄想コメント】 

2199版では徳川さんのシーンがいちばん不満です。徳川さんは簡単に泣いたりしません。もっと気丈で、でも最後には人間の弱さが思わず出てしまう。74年版の「まだまだ話したいことがある!」と取り乱す徳川さん、あのシーンにぐっときました。そのオマージュとして74年版の台詞を盛り込みつつ少しアレンジしました。


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「かならず、還る」① [ヤマト2199外伝]

 

 

  prologue

 

 

 

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「子供が生まれたんだ。二人で名前を考えるだけで持ち時間を使っちまったよ。」

先ほどの若い乗組員の言葉を、徳川彦左衛門は通信室の椅子に座し、

目を閉じて静かに思い出していた。

希望。

今われわれが、家族とのたった5分間の交信で伝えなければならないこと。

それは明日につなぐ希望なのだ。

徳川はゆっくりと目を開け、IDの数字をひとつひとつ確かめるようにキーボードに打ち込む。

目の前の漆黒のモニター画面がブンと小さく低く震える。

 


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