「かならず、還る」② [ヤマト2199外伝]
episode:1
機関長
徳川 彦左衛門 三佐
闇物資に手を出した長男夫婦を責めることは出来ない。
それも家族を守り、生き抜く覚悟からの選択なのだ。
しかし足元の暗さばかりに怯えていても
地球に残された時計の針は止められない。
顔を上げ、明日の光を探し、次の世代に指し示すこと。
それがわれわれに課された使命と信じればこそ、
徳川はなんとしてもそれを地球で待つ家族たちに伝えたかった。
気が付けば、堰を切ったように話し始めていた。
「太助、望みを捨てるな。
たとえ駄目かと思っても、明日への希望を捨てると生きていくのも辛かろう。
明日を見据えろ。
そして僅かな光であってもそれを手繰り寄せ、
愛子にその希望を託せ。
いいか太助、必ず彦七たちにも伝えてくれ。
愛子を育てろ。愛子、大きくなれ。」
徳川は一気に捲し立てた。
まだまだ伝えたいこと、話したいことが次々と口を衝いた。
今にも溢れ出しそうな気持ちを、話し続けることで必死に堰き止めた。
モニターに映る愛子の顔がどんどん霞んでいく。
もっともっとこの目にその愛しい姿を焼き付けておきたいはずなのに、
堪えた涙がそれを遮る。
それでも徳川は瞬きもせず、ひたすら話し続けていた。
【妄想コメント】
2199版では徳川さんのシーンがいちばん不満です。徳川さんは簡単に泣いたりしません。もっと気丈で、でも最後には人間の弱さが思わず出てしまう。74年版の「まだまだ話したいことがある!」と取り乱す徳川さん、あのシーンにぐっときました。そのオマージュとして74年版の台詞を盛り込みつつ少しアレンジしました。
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