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「かならず、還る」⑦ [ヤマト2199外伝]

  episode: 6

 

  機関士

  藪 助治 一曹

 

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 「何が楽しんだか・・」

コスプレ姿で嬉々と廊下を走る女性乗務員たちに呆れていると、

いきなり艦長がやってきたので藪は慌てて敬礼をした。

艦長は直立不動の彼を一瞥しただけでその横を通り過ぎていった。

艦長と一塊の機関士の関係なのだ。

当たり前だとわかっていても、

こういう時に藪はつくつぐ自分の存在について考えてしまう。

 

「所詮、俺なんて・・」

いつの頃からか気がつけばいつもそう思って生きていた。

遊星爆弾で両親を亡くし、もう守るべき家族も誰もいない。

だからといって

「地球を救うために」などと大仰な大義も無い。

それどころかイスカンダルへの航海が成功する可能性など

限りなく少ないとすら思っている。

それなのに、なぜ皆はてらいもなく希望を口にできるのだろう。

藪にはそれが不思議で仕方なかった。 

そんな彼らの熱に包まれた赤道祭に、

藪が身を置く場所などどこにも無かった。

 

藪は何も望んではいなかった。

自分自身が生きながらえる意味も

理由さえも思い当たらなかった。

窓の外には補修作業中の甲板員たちの姿が見える。

「俺もちっぽけな交換部品のひとつだ。」

 

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そんな藪でも、

此処に在る意味を感じられる時がある。

それは徳川の傍で

ヤマトのエンジン音を耳にしている時だ。

そして何故かその時、

このエンジン音は絶やしてはいけないと思うことができる。

ほかには一切何もない。

ただそれだけの理由で藪は此処に在る。

 

 

 

 

【妄想コメント】 

2199版では藪がかなりフィーチャーされてました。でも悲観主義の彼が「俺たちが地球を救う。」と純粋な気持ちでヤマトに乗艦したとは思い難い。そこで彼は何故ヤマトに乗ったのかを妄想しました。その勝手な妄想が、後の本編での彼の選択と行動ともなんとなくつながったように思います。


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